(1)飛行機の離陸から着陸までをマスターしよう

<目次>  1、飛行機と科学  2、機体とパワーソース選び  3、エンジン機に必要なもの  4、ラジコン保険には必ず加入しよう  5、エンジン始動  6、地上走行練習  7、さあ、いよいよ離陸だ  8、旋回と軽演技  9、気を落ち着けて着陸 10、各種曲技飛行にも挑戦してみよう  (1)水平8の字旋回  (2)背面飛行  (3)インメルマン・ターン  (4)スプリットS  (5)キューバンエイト  (6)ストール・ターン   (7)スクエア・ループ   (8)ナイフエッジ  11、最後に
1、飛行機と科学   先日、「エア・レース」というレンタルビデオを見ました。   冒頭から二人の少年が2段上半角の付いた、とても安定のよさそうなバルサ製のフリーフライトグラ   イダーを持って野原を駆け回っていました。やがて2機は同時に空に放たれ、ランデブー飛行をして   いる単純な出だしなのですが、これを結構長くスローモーションで引っ張っていました。   飛行機の好きな人には楽しい映像なので、私などはこれを見ながら「よく調整が取れているな」と楽   しかったのですが、そうでもない人にはのっけから退屈な映像なのではないかと思います。   これは私の勝手な想像なのですが、監督は多分ラジコン好きなのだろうと思ってしまいました。   紙飛行機でもゴム動力の飛行機でもよく飛ぶように子供の理解できる範囲で工夫をして飛ばした経験   があるかないかは、のちにラジコン飛行機をやる人とやらない人の違いなのではないかと私は思って   います。   私の子供の頃はまだ自動車も少なくて、小学校から家に帰ってくると目の前の国道で新聞紙で作った   紙飛行機をよく飛ばしていました。そのとき一緒に飛ばした同級生の中で調整よく上手に飛ばしてい   た友人はラジコン飛行機をやっています。あまりよく飛ばすことにこだわらずに諦めてしまった友人   は今でもラジコンにまったく興味すらありません。   子供の頃は男の子はみんな単純に飛行機に興味を持ちますが、大人になっても飛行機が好きかどうか   の分かれ目がその辺にあるのではないかと思います。   あたりまえ過ぎて例えになっていないかもしれませんが、幼児体験はその後に大きな影響があるので   はないかと思いますので、お子さんがいれば小さいうちに是非試してみていただきたいと思います。   一緒にこの素晴らしい趣味を共有できるかもしれません。   飛行機が飛ぶようになったのはライト兄弟以来の出来事ですが、鳥のように自由に空を駆け回る人類   の夢はそれよりもはるかに昔からの願望でした。   手に鳥の羽のような翼をつけて高いところから飛び降りたり、板を翼に見立てて羽ばたかしたりして   なぜ鳥のように飛べないのだろうと悩んでいたのでしょう。   まだ飛行機の原型が無かった時代は、我々が子供の頃に飛ばしていたような紙飛行機だって生まれて   いません。時代が進んで飛行原理が分からない子供にでも、形を真似ればとりあえず飛ぶ時代になっ   てからは、夢から進んで「よく飛ぶ」ことがテーマであり科学でした。   ラジコンを趣味に持つと徐々に航空力学を理解するようになります。思い通りに飛行させるにはそれ   相応の知識が必要になるわけですが、これは紙飛行機の翼をねじったり翼型を変えたりすることと少   しも変わりません。これを読んでいる読者の皆さんは少なからずやRC飛行機の魅力に取り憑かれた   お仲間だと思いますが、まだ上手に飛ばせない、或いはこれから飛ばせるようになりたいとお考えの   方は、1日も早くRC飛行機の基本をマスターされることを願って止みません。    2、機体とパワーソース選び   グライダーの話を先にしてしまいましたが、まず最初に手がける飛行機にはグライダーはあまりふさ   わしくありません。最初に選ぶ飛行機は安定のよい高翼機もしくは肩翼機にするのがよい選択です。   プロポから手を離しても水平に飛んでくれる自立安定性と、程よいスピードでコントロールし易い飛   行機は、初心者にもやさしく応えてくれますので、そのような機体を選べばよいのです。   基本を覚えるまでは間違っても低翼のスケール機などには手を出さないことです。   ラジコン機は時間が許されればバルサキットを製作し、機体構造をよく理解されてから飛ばすことが   理想ですが、今日的には完成機全盛の環境もあり安価で質のよい機体がたくさん出回っていますので   一般的な選択肢としてはどうしても完成機になってしまいます。   なぜバルサキットからがいいかと言いますと、手間隙かけて作った飛行機ですから壊したくないので   真剣度合いが違ってくるのです。私の友人がまだ飛ばせない時にバルサキットを作ったのですが、ど   うしても自信がなかったのでそれより価格の高い完成機を何機か買って、自分で作った機体が飛ばせ   るように練習した人がいます。自分で作ったものはそれほど大事なものになるのです。   電動かエンジンかは飛ばす場所の環境によっても制約があります。都心に近い所のクラブでは電動し   か出来ないところもあり、勝手にエンジン機を飛ばすことは出来ません。   エンジン機はパワーに余裕がありますが、エンジンの調整が出来ないとまともに飛行すら出来ません。   その点、電動機はバッテリーを搭載するだけで比較的簡単に飛ばすことが出来ます。   初心者向けの電動機はさほどスピードも出ませんので、エンジン機よりも精神的プレッシャーは少な   くて済むぶん、電動機は初心者向けといえるかもしれません。   最初は出来るだけ軽量でかつ翼面積の大きい機体を選べば初歩の段階を早く抜けることが出来る様に   なるでしょう。   エンジン機を選んだ場合は最初は2サイクルエンジンを選択するのがよいでしょう。その場合OSで   あればLAシリーズ、サンダータイガーのGPシリーズなどは安価でパワーもそこそこ、なによりも   飛行中にエンストしにくいエンジンですしメンテナンスが簡単なのでオススメです。   4サイクルも現在は扱いやすくなってきましたが、2サイクルより重量がかさむので機体の重量が重   くなることと、ニードルのピークが2サイクルより分かりづらいので最初からはオススメできません。   また保管やメンテナンスにも注意を払わなくてはベアリング等にサビを発生させてしまい、調子が維   持できなくなってしまうかも知れません。(国産の4ストロークエンジンはすべてクランクシャフト   やカムギヤ支持にボールベアリングを使用しています)その点、先述のエンジンはある程度パワーを   押さえた扱いやすい特性とともに、ボールベアリングを使用していないのでメンテナンスも簡単です。   扱いやすさはトルク特性の点でも言えます。低回転からフラットなトルクバンドを発生させる4スト   ロークに対し2ストロークは回転の上昇と共に徐々にトルクが盛り上がっていくという特性の違いが   あります。エンジン始動時には4ストロークは低回転から強いトルクを発生しているので、慣れてい   ない初心者は手や指をケガをし易い原因となります。その点、2ストロークは低回転時に余り恐怖感   を感じさせることなく初心者の方には扱いやすく感じると思います。   それでも誤解を恐れずあえて言うならば、最初の1機は電動機をオススメしておきます。なぜかと言   いますと、バッテリーさえキチンと充電すればスイッチオンですぐに飛ばすことが出来るからです。   このことで飛ばすことに集中できるためなのですが、フライト回数が多ければ多いほど早く上達する   ことが可能になることは言うまでもありません。   それとエンジン機に比べて機速があまり早くないので、万が一墜落させても機体の破損は最小限で済   むからなのです。また補修できる限りは出来るだけ補修し、同じ機体を繰り返し飛ばすことによって   上達は早くなる筈ですので、もし修復不可能になったとしても同一機体をもう1機購入することをオ   ススメします。   電動機は飛ばすために必要なものが少なく、最初に準備するものは機体とプロポ、動力用バッテリー   以外に特にありません。あれば便利なものでは予備のバッテリーと急速充電器で、予備のプロペラが   用意してあればほぼ完璧です。   エンジン機の場合は燃料・燃料ポンプ・プラグヒート用バッテリー及びコード・スターター等が必要   になります。燃料はどこのメーカーでも差はありませんのでニトロが15%程度のものを選べばよい   でしょう。ただし、燃料がなくなる度に銘柄を変えている人がたまに居りますが、これはやめておい   た方が無難です。何故かと言いますとメーカーによって燃料に含まれるオイル等の混合比が若干違っ   てくるためその度にニードル調整が必要になることが多いからなのです。それにエンジンは精密加工   によって出来た金属機械ですから各擦動部には適正なクリアランスが必要不可欠で、オイルの含有量、   その質によってコンディションが変わってしまうからなのです。アタリの付いたエンジンにはそれま   で使用していたなじみの燃料が一番いい訳なのです。    3、エンジン機に必要なもの   エンジンは燃料と空気の最適な空燃費が得られなければ快適に廻すことが出来ません。そして2スト   ロークも4ストロークも焼玉エンジンといわれる方式で点火させています。   プラグは自動車のようにスパークさせるのではなく、白金のニクロム線を赤熱させて着火させている   のです。どんなエンジンでも点火タイミングはありますので燃料の着火特性と合うような圧縮比と赤   熱度合いが合うように設計されているのが模型用のエンジンです。   そして燃料もかつては2ストと4ストでは別々の指定がありましたが、現在では飛行機用として発売   されているものは特に指定はなく、オイル含有量が20%前後のものを使えばよいでしょう。   前述しましたが加工精度の上昇により昔ほどの慣らし運転は必要なくなってきましたが、熱をかけた   状態での運転はユーザーがしなければなりません。エンジンの調整に慣れるためにも飛行前にこの慣   らし運転をしながら、スローからハイまでよどみなく回る各種調整を身につけましょう。   調整そのものはエンジンに添付された取扱説明書を熟読する必要があります。プロペラサイズなども   必ず記載されていますのでそれに従ってください。   始動に関して現在では手やスティックを使った始動方法は説明書に書かれていません。これはPL法   が出来てからですが、、事故が起こってもメーカーは責任を取れないからです。   手で掛けたい人はくれぐれも自己責任においてされるようにしてください。 スターターは一般的に12ボルトの電源を使用します。ほかに持ち運び易いニッカドバッテリー式や   リコイルスプリング式もありますが、あまり一般的ではありません。   プラグヒート用のブースターは平型1.5Vにコードを使用するものが初心者用として定番でしたが、   現在では価格も安くたくさん種類のある充電式のポケットブースターが一般的で、ベテランから初心   者までほとんどの人が使用しています。   あとは燃料ポンプと燃料チューブがあればだいたい必要なものは揃っています。 4、ラジコン保険には必ず加入しよう   飛行させるハード的なものは揃って来たと思いますが、案外忘れているのがRC保険です。   私は延べにして40年近くラジコンを楽しんでいますが、3年ほど前、不可抗力のノーコンで飛行場   にあった車のリヤガラスにエンジン機を突っ込ませてしまった経験があります。幸い人に被害はあり   ませんでしたが、それでも50万円(新車であったため)ほどの修理代が掛かりました。   事故当時に所持していた模型飛行機操縦士の登録証を見て、その場で保険会社に電話したことは言う   までもありません。現場の状況を話してすぐに受け付けてくれました。そしてなんの問題もなく修理   代を補填してもらったのでした。まさか私がというのが本音ですが、これは誰でも起こりうることな   のだと思います。被害が大きくなかったから良かったものの、社会人として最低限の責任を取るため   にも保険には入っておいたほうがいいし、クラブでは必須としているところが殆どです。   RC保険は財団法人・日本ラジコン電波安全協会 と財団法人・日本航空協会の2種類があり、どちら   かを選べばよいと思います。それ以外にも損保会社で個人賠償保険などもあり、幅広く保障してくれ   るそうです。詳しくは模型店などに訪ねてください。転ばぬ杖の先となるはずです。 5、エンジン始動   電動機はスイッチオンですぐフライト可能となりますが、エンジン機はスイッチひとつでエンジンは   掛かりません。慣らし運転はすでに終わっているものとして説明します。   ここでは2サイクルを例に取りますがエンジンを始動する前にまず燃料を満タンにします。   ポンプをつないで燃料タンクへ燃料を送りますが、タンク内のエアーがプレッシャーパイプから排出   され、満タンになると燃料がマフラー内に出てきますので、マフラープレッシャーのパイプは外して   おくことを薦めます。以前のように手掛けしていた時代にはマフラーから入った燃料が大量にクラン   クケースに達した場合、プロペラは廻そうにも廻りませんでしたが、スターターで掛けるようになっ   てからはムリにでも廻ってしまい、ウォーターハンマーというエンジンを壊してしまう事故を起こし   てしまいます。仮に燃料が流入していなくても、プラグヒートする前に1〜2回転はプロペラを回転   させるようにして確かめる習慣を付けてください。   もしこれで廻らなかった場合はエキゾースト(排気口)を下に向けクランクケースに入った燃料を排   出させるか、プラグを外してスターターで勢いよく廻して排出させてください。   それではいよいよエンジンを始動しますが、その前に送受信機双方のスイッチを入れます。この順序   は必ず送信機から入れて次に受信機というようにします。逆に切る順番は受信機側を切ってから最後   に送信機となります。クラブの飛行場でしたらスイッチを入れる前に「○○番、入れますがよろしい   ですか?」と申告する習慣を付けてください。同じバンドの人がすで飛ばしているときに混信させる   と、墜落をさせてしまうことになります。   スイッチが入ってキャブレターまで燃料が来ているかを確かめます。もし来ていない場合はキャブレ   ターまで燃料を呼び込みます。スロットルを全開にしてキャブレター口を指で押さえ、その状態でプ   ロペラを回転方向にゆっくり廻すと燃料がキャブレターにくるのが目で確認できると思います。   再びアイドリング位置までスロットルを戻してからプラグヒート用のブースターを接続します。   これで準備は整いました。あとはスターターをスピンナーに押し付けてプロペラを廻せばエンジンは   始動します。   エンジンが掛かれば、ややエンジンの回転を上げてプラグヒートを外してください。ここでニードル   調整をしておきます。一度ニードル位置が決まれば調子が変わらない限りそんなに頻繁に調整は必要   ありませんが、良い位置になるまで丹念に調整します。   ニードルは全体のセッティングにメインニードルを優先し、スローニードルは補助的な役目をします。   メインニードルの調整方法はまず水平にして全開状態で行ない、だんだん回転が上がるようにゆっく   り絞っていきます。ピークに近づくとそれ以上回転が上がらなくなりますのでその位置がピークと判   断します。そのピークの位置からやや戻して(20〜30度)すこし濃い目にした位置が飛行に適し   た良い位置となります。試しにピークから更に閉めこむとやがて急に回転が落ちて止まってしまうの   で、そんなときはもう一度半回転ほど戻してからやり直しします。   セッティングが決まる位置は一度閉めこんだ状態から1〜2回転開けたところにあるはずです。   良いニードル位置とは飛行状態はさまざまな変化を伴いますので、どんな状態でも安定して回転が続   く位置をいいます。「濃い(リッチ)」「薄いリーン)」と表現しますが地上で調整したときにやや   濃い状態がエンジンにとっては良い位置です。   飛行状態では頭を上げたときに薄めになり、頭を下げたときに濃いめになります。特に薄めにセッテ   ィングするとオーバーヒート気味になり、濃いめにすると低速でエンストしやすくなります。   地上で最後の仕上げに機体を上に向けスロットルのスロー〜ハイを繰り返し、ハイにしたときにスロ   ットルについてくるのであれば大体良い位置にあるといえます。もしモタつくか止まってしまうとき   は薄いので上に向けた状態でニードルをやや開けてるようにします。   メインニードルが決まってから再び水平状態にしてもう一度全開にして様子を見てから5〜10秒ほ   どスロー状態にし、止まってしまうかモタついて回転があがるのであればスロー時が濃いようです。   スローニードルが対向ニードルであればほんの少し締め込みスロー時の燃料を薄くし、エアーブリー   ドタイプであれば調整ネジを少し開けてスロー時の空気が多く入るようにします。   いずれにしても可能な限り「濃いめ」を心掛ければエンジンは長持ちしますので頭に入れておいてく   ださい。ここまで来ればあとは飛ばすことだけになりましたが、安全のためにプロペラを締め付けて   いるナットを増し締めしてみましょう。全体に初めて熱が掛かって緩んでいることが多いのがこのプ   ロセスが終わる頃ですから、気持ちを落ち着かせる意味でもやっておいて損はありません。 6、地上走行練習   いよいよ初飛行が近づいてきましたが、作ったばかりの飛行機はベテランでも何度も確認することが   あります。それは各舵の動作方向が合っているかです。何年やっていてもついウッカリするのがこの   動作方向確認です。もし逆になっていたら大変です。それこそ飛行どころではなくなってしまい、即   墜落が待っています。   確認できれば地上で歩かせるタキシングをして見ましょう。指導者によってはこのタキシングがまと   もに出来るようになるまで飛行はさせないで練習させる指導者もいます。ここで一番練習になるのは   スロットルの使い方とラダーの使い方です。あっちこっちと歩かせてみてください。   飛行するまでにエンジンやモーターから発生する「半トルクとられ」も経験しますので、ラダーの当   て舵も打てるようになります。これはプロペラを廻すために発生する反動トルクにより、回転と反対   方向に機体が行こうとする飛行機特有のクセです。ひとたび地上を離れるとこの「半トルクとられ」   は飛行に影響しなくなります。あくまでも地上でだけの現象なのです。   大事な機体は簡単に壊したくはないものですから、こういった練習方法も非常に有効だと思います。   次の練習方法に入りますが、これを出来るか出来ないかは飛行場の大きさによって違いが出てきます。   それは滑走を始めて地上を10センチほど離陸したらスロットルを戻し着陸させる方法です。   ヘリコプターのホバリング練習のようなものですが、これが意外と気持ちの余裕を作るのに役立ちま   す。但し滑走路の長さに余裕のない飛行場でこれをやると、滑走路外に飛び出して文字通りヤブヘビ   になる恐れがありますので注意して行なってください。自分から遠いところまで行った飛行機をまた   自分のところまで戻す練習にもなると思います。   この間にもし転倒したり地面に主翼をこすっても、ほとんど壊れることはないと思います。もし仮に   機体に損傷があっても簡単な修理が必要な程度ですので、いきなり飛ばして大破するよりは良いでし   ょう。危険が迫ったらスロットルを戻してラダーで逃げるように覚えてください。 7、さあ、いよいよ離陸だ   燃料を満タンにして各部を点検しながら心を落ち着けてください。   これまでは2次元での動きでしたが、これからは3次元での動きになります。単にひとつ増えるだけ   でなく、上下、左右、斜めとどこで行ってしまうのです。コントロールしなければならないのはアナ   タなのですからしっかり頑張ってください。   滑走路では必ず風下に立ち、初めてのときは機体の真後ろから離陸させるようにしましょう。   空に上がってどこを飛行させるかのイメージを作っておきます。どうしても行ってはいけない場所が   あるのであればキチンと意識しておきます。飛行コースの「イメージなんてまだまだ」と思ってはで   はいけません。飛行させるときは常にこのイメージ作りから始めなくては上達しません。なぜならば   RC飛行機は飛び上がってまもなくどちらかに旋回させなければどこかへ行ってしまうのです。   直線飛行4、旋回1ぐらいの割合でこれをするのですからあらかじめイメージしておきましょう。   さて、各舵のニュートラルを確認したらいよいよ離陸させます。   離陸はスロットル全開で始めてください。中途半端なスピードで飛び出すと返って危険なのです。   離陸するに充分なスピードに達したら、わずかにエレベーターをアップ方向に引くと機体が地上から   離れると思います。ここでエレベーターを引き続けると機体がドンドン頭上げしてしまいますので、   エレベーターをニュートラルに戻してください。水平飛行になればよいのですが、まだトリムが取れ   ていない状態ですので安全な高度に達するまでエレベーターを調整しながら飛行させてください。   安全な高度に達したらこの状態で水平にまっすぐ飛行するようにトリムを調整します。トリムはエレ   ベーターからはじめ、次にエルロン、ラダーと取るようにしますが指導してくれる人が側にいるとき   は、取ってもらうようにしましょう。   一旦、飛び上がったらここまでをほんの10秒足らずでやらなくてはなりません。あっという間に飛   行機が遠くへ行ってしまうので機体が小さくなる前に旋回に入ります。    8、旋回と軽演技   旋回は自動車と違い一つの舵では出来ません。   エルロン機であればエルロンとエレベーター、エルロンのないラダー機であればラダーとエレベータ   ーというように必ず一緒にエレベーター操作が必要です。   まず旋回させたい方向へ機体を30度程度傾けてください。この状態で打った舵を放すと自立安定性   のよい機体は徐々に水平に戻ろうとします。主翼に上半角の余りついていない機体ですと水平に戻ら   ず、そのままの姿勢が続きます。どちらの機体でも水平に戻すため打った方向とは逆の当て舵を打っ   て水平に戻すことが重要です。   さて、傾けたまま飛行していると徐々に機体の頭が下がってくると思います。傾けた主翼は揚力が減   少しているので頭が下がってくるのが普通です。これを補うためにエレベーターをややアップを引く   ことでバンクの外側に押し付けるような姿勢を作ります。エレベーターを引き過ぎると旋回しながら   上昇が始まります。でも頭を下げながら旋回させるよりは安全ですので、水平もしくはやや上昇とい   うような旋回を心掛けてください。   機体がイメージした方向へ向いたら当て舵を打って水平に戻します。このようなことを繰り返し楕円   軌道のコースを同じ高度で飛べるようになるまで練習してください。   ここで一番危険な状態に陥るのは、自分と対面方向に飛行機が飛んでくるときです。まだ視認したも   のを感覚的にコントロールできるだけの余裕は当然ないのですから、間違った方向へ舵を打たないた   めにする良い方法とは、首をひねって常に機体の進行方向へ体か手を向けるようにすることです。   そうすることによって進行方向の正方向で舵を打つことになるので打ち間違いが無くなります。   慣れてくるといつの間にか、体をひねらなくても自然と正しい方向へ打てるようになってくるはずで   す。最初は指に力が入ってしまうものですが、力が入れば入るほどうまくコントロールできなくなり   ますので、できるだけ力を抜いてやわらかく指を動かすようにしてください。    初飛行から軽演技までは欲張らない方がいいのはいうまでもありませんが、何度も練習してこれまで   のことが緊張しないで飛ばせるようになれば軽演技もしてみましょう。   まずループ(宙返り)ですがエレベーターを引き続けることで簡単にトライすることが出来ます。   但し、ループの後半は地面に向かってスピードの乗った降下をしてきますので、開始点は充分に高度   を確保してからはじめるようにすることと、水平飛行で上昇に負けない機速が必要になりますのでし   っかり全開でスピードに乗せてください。もし、宙返り中に機体が思った方向以外に傾いても慌てな   いで宙返りが完了してから水平に直してください。   次にロールです。ロールの開始点も宙返りと同様に高度を確保してください。自分の立っている地点   を通過したのち、真後ろから見えるところで最初は始めてみましょう。   ややアップを引いて頭を少し上げた状態から、度胸を決めてエルロンを左右どちらかへ一杯に打って   みます。1回転する寸前にスティックをニュートラルに戻してロール完了です。   慣れてきたら背面になる寸前にほんの少しエレベーターダウンを打てばバレルロールにならずキレイ   なロールができるようになります。   着陸する前に色々なことを先に書いてしまいましたが、ムリをせず上空で余裕が出来るまでは着陸に   トライしないで指導者の方に降ろしてもらうようにするほうが無難です。   というのは着陸が一番難しいからなのです。着陸が出来ればRC飛行機は一人前なのです。   上空でミス打ちをしなくなるまでしっかりと練習してからトライするようにしましょう。 9、気を落ち着けて着陸   着陸の基本はなんと言っても楕円軌道の場周飛行です。この延長線上に着陸があるのです。   ここで一番重要なことは滑走路に対してまっすぐにルートを取れることなのです。一旦まっすぐに入   ったらひたすらコースがずれないように修正舵を打つ必要があり、降ろさないまでも低空で滑走路上   を通過する練習が効果的です。その中で一番コース、高度がうまく行ったときにスロットルを戻して   着陸させればいいのです。地面に近くなったら上昇しない程度のエレベーターアップを引いて着地の   スピードとショックを緩和させるようにしますが、そのまま待てばスピードが落ちて水平状態を保っ   たまま着陸です。   接地した瞬間にスロットルを再びハイにすればタッチアンドゴーです。今度は離陸時と違ってある程   度スピードがありますので、ややアップ程度で上空へ復帰できます。   同じ飛行機でも同じ着陸はありませんので降ろす度に新鮮な感覚があると思います。   くれぐれもムリに着陸させないで不安があったらすぐに着陸やり直し(ゴーアラウンド)をするよう   にしてください。やり直す気持ちがあればパニックは起こさないようになります。   それと高度を下げるためにエレベーターダウンは禁物です。飛行機において背面状態以外にあまりダ   ウンは打つ必要がないのと、特に着陸では機速を落とさなければならないのにダウンを打った瞬間か   ら坂を転がるように機速が上がってしまいます。こうなると高度やコースが良くてもスピードが殺せ   ず滑走路を飛び出してしまうことがあります。   先にグライダーの話をしましたが、グライダーはエレベーターダウンを頻繁に使います。だから基本   練習には向かないのであって、電動機やエンジン機が理解できてからでも遅くはないのです。    10、各種曲技飛行にも挑戦してみよう   これまでのことが出来るようになるといろいろな曲技が可能になってくる頃です。そろそろ飛行機の   醍醐味でもある曲技飛行にチャレンジしてみましょう。   どの曲技も最初にトライする時の高度は自分の安心できる高さに上げて余裕を持って始めましょう。 (1)水平8の字旋回   楕円の場周飛行が左右ともに苦手意識を持たず出来るようになれば次は8の字旋回をして見ましょう。   これは8という文字を横に寝かした線上をなぞるような飛び方ですが、左右の円旋回の接点を自分の   中央へ来るように飛ばします。ポイントは旋回中に高度変化をさせないようにすることですが、エレ   ベーターを僅かに引いたり戻したりの微妙な操作が必要です。バンク角も一定で旋回出来るようにエ   ルロン及びラダースティックからは指を離さず、姿勢に応じて舵を入れたり抜いたりする必要があり   ます。接点を通るときの水平飛行時にエレベーターが残らないよう注意すればきれいな形が出来ます。   また、大きい8の字はスロットル全開でも良いでしょうが、小さい8の字はハーフスロットル程度で   するほうが安全です。   (2)背面飛行   この曲技は基本的にラダー機では不可能です(ベテランはする人もいるが)。基本的にハーフロール   してから背面状態にしますがループの頂点でハーフロールしてからでも入れます。   背面の時、エルロンはそのままですがエレベーターとラダーは舵が反対になります。そしてエレベー   ターは背面時の水平を出すためトリム的にややダウンを保持する必要があります。最初のうちは背面   での旋回はさせないで直線飛行だけにして、慣れてきてから背面旋回を覚えましょう。   背面旋回で難しいのは直線飛行時のエレベータダウン量です。ターンの時はダウン量を深めますが、   直線に戻る時点で正面のようにニュートラルに戻せないので水平に復帰するには僅かなダウンを残し   ておかなければなりません。自分の目だけが頼りですから、ひたすら練習で習得してください。   (3)インメルマン・ターン   大戦中のドイツ軍パイロット、マックス・インメルマン大尉の名前がそのまま付いた空戦曲技です。   名前は難しそうですが、曲技の中では簡単なほうです。宙返りの頂点で背面になった機体を、半分   ロールさせて正面に戻すだけですし、曲技の終点が一番高いところなので安全な曲技といえます。   コツはループと同様に上昇時にスロットル全開で始めることと、エルロンを打つ直前にエレベーター   をニュートラルにすることです。   敵に後ろにつかれたインメルマン大尉がその敵の後ろに廻り込むために編み出したワザだそうです。 (4)スプリットS   この曲技は前項のインメルマン・ターンの反対と考えれば分かりやすいと思います。高度を下降させ   ながら行なう曲技ですので開始点は高く取ってから始めます。   水平飛行からハーフロールで背面にしてエレベーターアップで下りのループを半分させ、水平の正面   に戻ったところで終わりです。後半が下りのためスピードが上がりますので、エレベーターのアップ   を引く前にスロットルをハーフ、または全閉にするようにします。この曲技は飛行機が美しく伸びや   かに見えるため、そして同じ線上を戻ってくるためフライヤーが多用します。   開始点と同じ高度に戻す飛ばし方もあり、その場合は水平飛行からエレベーターアップで30度程度    の緩上昇で始め、上りながらハーフロールにて背面に入れます。ややダウンを打ち、そのままの角度   で上昇させて高度を稼いでからエレベーターアップでループさせ水平位置に戻って終了です。   前項のインメルマン・ターンと組み合わせると飛行場で拍手喝采になること請け合いです。 (5)キューバンエイト   この曲技は(1)で説明しました水平8の字旋回のタテもの版です。でもスティック操作は全然違い、   前項のスプリットSで「開始点と同じ高度に戻す飛ばし方」のスプリットSを左右くっつけた飛ばし   方になります。この曲技はあまり高さを取るとキレイに見えないことと、すべてのタテもの操作を真   横から見て行ないますので、スプリットSが上達してから行なうようにすれば難しくないと思います。   きれいに決まるようにするには緩上昇時のロールにピタッピタッとメリハリを付けることです。ハー   フロール時に修正舵を打たなくても水平になるよう練習してください。 (6)ストール・ターン   水平飛行から角を付けた垂直上昇をさせ、頂点をラダーで逆Uの字を描くように反転させて下降し、   開始と同じ高さの水平飛行に戻す曲技です。頂点ではスピードをほとんど失速まで落とし、キレイな   放物線を描くようにするラダーとスロットルの操作が重要です。頂点で止まってからではラダーが利   きませんので少し前から徐々にラダーを入れ始めます。そして頂点ではフルラダー、下降し始めたら   徐々に抜いていくようにします。荒くやるとテールが左右にピョコピョコ動いてしまうので、動く前   に先読みのアテ舵が打てるようになれば完璧です。垂直に下降するときには少々エレベーターのダウ   ンが必要になることもあります。垂直に降ろす恐怖感に打ち勝ってください。 (7)スクエアー・ループ   正方形をタテにした宙返り(?)です。四隅に角を付けるのがミソで、水平から垂直上昇、背面まで   はフルスロットルで行ない、垂直下降に入る直前から水平に戻るまではスロットルを下げておきます。   この曲技がキレイに見えるようにするには、どの線も等速で飛ばすようにすることです。   下降の際はやはりダウンが必要になります。前項でも同じことを言いましたが、なぜダウンが必要か   といいますと、水平飛行で取ったエレベータートリムは機体重量と揚力の釣り合いが取れたところで   水平飛行しているのですから、下降によって主翼に機体重量が掛からなくなった状態ではアップを入   れたことと同じ効果になるからです。このことは上昇でも同じことが言えるのですが、上昇のときは   余りダウンを打つことはありません。それは上昇では徐々にスピードを失い、下降ではだんだんスピ   ードが上がることにあります。 (8)ナイフエッジ   これまでの曲技の中で一番難しい演技です。主翼の揚力を一切使わないで胴体の側面の抵抗だけで浮   かせる訳ですが、初心者向けの高翼機や肩翼機は苦手とする曲技なのです。主翼の揚力に頼らないの   に変な話ですが、安定成分の多い初心者向けの機体ではなく、低翼機を飛ばすようになってからチャ   レンジしてみましょう。スティックワークは左ロールから入るパターンで説明しますが、水平飛行か   ら1/4ロールをして機体を寝かせたらすぐ右ラダーを入れます。このときにエルロン方向では寝ぐせ   、置きぐせが、エレベーター方向ではアップぐせ、ダウンぐせがどちらかに出ると思います。   最初は無理をしないで指導者にプロポでミキシングを掛けて貰ったほうがいいと思います。慣れてく   れば4チャンネルをフルコントロールして飛ばす醍醐味も味わえるようになるでしょう。   大きな機体でこれをやると「ブォーー」と空気抵抗によるすざまじい音とともに目前を通過すること   に驚きと感動を覚えることでしょう。      これら様々な曲技を組み合わせることにより楽しさも倍増すると思いますので、ひとつずつ確実に身   に付けられるよう努力してください。私はひとつ覚えるたび、家に帰ってからおいしいビールを飲む   というようにして楽しく覚えた記憶があります(関係なく飲んでいたとの声アリ)。 11、最後に   書いてしまえば何のことはないように思えますが、やはりRC飛行機は実機と同じ理論で飛ぶ非常に   高度な趣味です。この趣味で簡単に飽きてしまった人はあまり見かけません。それだけ奥が深い趣味   なのです。落とせば壊れてしまうリスクは大人だけの緊張感と楽しみを与えてくれます。   しかし、事故の危険性は相当なものですから他人に迷惑が掛からないような配慮が極めて必要です。   私の知る範囲でこの趣味人はいい加減な人がいないのと人間味あふれる人が多いことは事実です。   この趣味を通じていい友人関係を築いて頂けたらこれよりのものはないと思います。私の周りの人間   はみんなそのような人ばかりです。   ぜひアナタもお仲間に加わって頂けたらと思います。                                そら工房ドットコム  廣瀬 清一