<ツボを得たエンジンのニードル調整方法>


皆さんはニードル調整をどのようにしてやられていますか?ニードル調整ほど千差万別、各人に
よって違うものはありません。
目に見える判断基準が少ないことがその要因ですが、思う様にエンジンが廻ってくれない、飛行
中にエンストしてしまう等、エンジンのご機嫌が余りよろしくないという方には再度、ニードル
調整を基本から見直していただきたいと思います。

1、ニードル調整に入る前に

よく経験することですが、調整以前の問題点を先に挙げておきたいと思います。
以下の問題点がネックとなって「ニードルがうまく決まらない」と言っている方はとても多いも
のです。
@タンク配管はキチンとしているか?
A燃料フィルターは所定の位置に付けてあるか?
Bニードル内部にゴミが詰まっていないか?
C配管が長すぎたり、途中で折れ曲がっていないか?
Dプラグフィラメントの劣化または不良になっていないか?
等々、まだまだ有りますがニードルとは直接関係のないところは前もって完全にしておいてくだ
さい。また、タンク内部で問題が発生していることもあります。
タンク内部の配管のつぶれ、シリコンチューブの折れ曲がり(キンクとも言う)などもエンジン
不調の原因となり、まれに見られますがタンク内部のオモリが外れているときなどは、満タン時
は調子よく廻っているが、燃料が少なくなってくると途端に調子が悪くなったりエンストしたり
します。
笑い話のようですが、マフラープレッシャーを抜いたまま離陸させてエンスト、最悪はオーバー
ヒートさせてしまった経験もこの講を読んでいる人は少なからず経験している方が多いのではな
いか思います。
ご自分なりの方法でこれまでうまくいっていたのに、なんだか最近エンジンの調子が悪いという
方はニードル調整の前に以上のことをまず調べてください。

2、基本的なニードル調整

これからの説明はポンプ付きエンジンや過給システムのエンジンは除き、一般的なエンジンの場
合で説明していきたいと思います。
すでに慣らしも済んでアタリが付いているエンジンは、エンジン始動の都度、ニードル調整の必
要はありません。しかし年間を通してみればどんなエンジンでも程度の差はあるが二ードル調整
が必要になってきます。
1年間を通してニードル調整が必要になってくる時期は、秋を過ぎて冬にさしかかり気温が低く
なり始めた時と冬から春になって気温が上昇してきた時です。
これはハイパワーエンジンなどでは顕著にその傾向が現れます。燃料中に含まれるオイル分は気
温の変化によってその粘度が変化し、一番狭くなっているニードル部を通過する流量が一定では
なくなるためです。
現象としては、夏のあいだは始動してすぐにでもエンジンは気持ち良く吹け上がっていたが、寒
くなってきたらスロットルスティックを上げると回転が付いて来ず、そのままにしているとやが
て止まってしまう。この状態はセッティングが薄くなっている状態です。エンジンが冷え切って
いることもありますが、2〜3コマ、ニードルを開けてみて少し混合気が濃い状態にしてやれば
ほとんどの場合は快調に吹けあがるようになると思います。
その逆で徐々に暖かくなってきたときは始動時には気づきませんが、スロットル全開で飛行させ
ても今ひとつスピードに乗ってこないということもあります。でもパイロン機ならいざ知らず、
通常であればそんなに神経質にならず、寒い時に作ったセッティングで年間を通じて飛行させた
方が良いと思います。それは常に「やや濃い目のセッティング」になるからであって、冬になっ
てニードルを開けなくてはならないセッティングでは「常に薄めの状態」であることの証明にな
るからです。
飛行機のニードル調整時、ピークまでニードルを絞って行ってそこから数コマ戻すだけ、といっ
た調整のみで飛行させている方は、決して間違ってはいませんが意外に多いと思います。離陸し
てすぐは高度を確保するまで機体はやや上を向いた姿勢で飛行することになります。そのときの
タンクの位置はエンジンよりも低い位置にありますので、地上でピークを出したときよりも「薄
め」になりがちです。このときのエンジンの調子を注意して観察してください。2サイクルでは
「回転が徐々に下がってくる」「エンジンが止まりそうになった」4サイクルでは「カリカリと
ノッキング音がしている」2/4サイクルともに「マフラーからの排気煙がほとんど出ていない」
というような場合はニードルが絞りすぎになっていることがほとんどです。
『おかしいな?地上では良かったのになァ』と思うでしょうが、エンジンの搭載角度や燃料配管
の長さによって機体ごとに同じではありません。特に倒立搭載の場合はキャブレターの位置が正
立マウントよりも低い位置になりますので、そのことも考慮に入れてニードルを決める必要があ
ります。また燃料の配管は長くなれば長くなるほど流路抵抗が増えてニードルの合う調整巾が狭
くなりますので、必要最低限の長さに留めるような配管を心掛けたいものです。
ヘリコプターの場合は飛行機よりも最適なセッティングが見つけにくいものです。それは、地上
においてスロットルを全開にすることが出来ないからです。
ヘリエンジンの場合はどのメーカーでも必ず最初にエンジン始動するための目安として、『ニー
ドル全閉から何回転戻しで最初に始動してください』と取扱説明書にあるはずです。
ここからまず始めて、ホバリング状態のエンジンからの排気煙の量、スロットルレスポンスの良
否を確かめながら、少しずつニードルを絞っていくようにします。つまり、濃い状態から徐々に
薄い方へと調整するのであって、最初から混合気が薄い状態では始めないことです。
「ブツブツ」といってホバリングさえ出来ない事もありますが、徐々に絞っていくことにより、
レスポンスも良くなって明らかにパワーが増えていくのが分かると思います。
ここから先はどこまで絞ってよいのか判断しづらくなってきますが、まずは排気煙の量を見てみ
ましょう。燃料にもよりますが、ほとんど煙が出なくなってしまった場合は絞り過ぎです。
やたらにツンツンとスロットルが敏感になっているときも絞り過ぎです。また、一定の高さでホ
バリングしているのに段々エンジン回転が上がってくる場合も同様に絞り過ぎです。
ヘリコプターは飛行機以上にエンストは致命傷になりますので、エンストを怖がって絞り過ぎで
飛行させている人は多いものです。しかし、メインニードルのセッティングがよほど濃くない限
り、濃すぎてエンストすることはまずありません。この場合はスロー側のニードルで調整をする
ことになりますが、要点はいつまでもエンストしないセッティングではなく、スロットルを立ち
上げるときにモタつかないセッティングにすることです。
よく見かけるのはエンジン始動後、スタートポイントに着くまでにエンストしてしまうので、止
まらないようにドンドン絞ってしまう人がいることです。あくまでも飛行に最適なセッティング
とはいつまでも止まらない位置ではなく、20秒ほどアイドリングを続けると止まってしまうぐ
らいのポイントであるということを覚えておきましょう。
ベテランになればなるほど出来る限りの「濃いめ」の調整で飛行させているということを知って
おいてください。でなければ3DやF3-Cの演技中にエンジンは悲鳴を上げてしまうのですから。
そして「やや濃い目」は2サイクル/4サイクルを問わず全てのメーカーで必ず推奨しています。

3、もう一歩進んだニードル調整とは

飛行機の場合はすでに実行されている方が多いと思いますが、スローからフルハイまで機体を色々
な姿勢にしてみて、どの姿勢でも止まったりモタつかないニードル位置を探し出すことです。
特に機体を真上に向けたときと真下に向けた時が大事です。上に向けた時は薄くなり、下に向けた
時は濃くなることが分かると思います。
最初に地上で水平で出したニードル位置では上向きにした時、2〜3コマ開けないと回転が付いて
こない、しかし下向きでスロー位置にしたときは止まりそうになってしまう。どちらも納得がいく
まで調整を煮詰めるようにすれば、実際の飛行中にはいかなる姿勢でも安定して回るセッティング
が可能となります。
そして、燃料がまだ2〜3割残っている状態で着陸させて、エンジンを止めずに再度このテストを
してみることです。
確実に満タン時より混合気が薄い状態になっていますので、特に上向き状態の時、息をつかずに回
転がついて来るようであれば、ほぼ最良のセッティングが出来ているといっていいと思います。
ヘリの場合は上空飛行を何本か全開で直線的に飛行させ、そのときのエンジン音を注意深く聞き、
カン高すぎるときは薄め、こもっているときは濃いめと判断してください。
その直後のホバリングでエンジン回転が最初のホバリング時よりも高くなっている時や、着陸させ
て異常にエンジン周りが熱くなっている時は絞り過ぎによるオーバーヒート状態です。
上手な人が30%などのハイニトロ燃料を使う理由は、濃いめのセッティングでもパワーが出せる
からなのです。飛行機でもヘリでもニードルを絞ればパワーが出しやすくなりますが、それによる
オーバーヒートやエンジン焼き付きの可能性が高まります。
特に暑くなる夏季は放熱の点で不利になりますので注意が必要です。
エンジンの冷却で一番重要なのは、外部からの送風よりも内部からの混合気による冷却なのです。
絞りすぎによってこの冷却成分が少なくなってしまえば結果はご想像の通りなのです。
これから夏に向けてドンドン暑くなってきてエンジンには過酷なシーズンに入りますので、皆さん
ももう一度ご自分のエンジンのセッティングを点検していただきたいと思います。


                       そら工房ドットコム     廣瀬 清一